室生 — 女人高野と芸術の森
古代の祈りの場と現代のランドアートをひと筆でつなぐ、京都発・奈良室生の一日。女人高野・室生寺から龍神の古社、ダニ・カラヴァンの芸術の森へ。
THE DRAGON'S RAIN
龍の雨 — 室生、水をめぐる千二百年
室生の谷では、水はいつも祈りの対象だった。
奈良時代の末、皇太子——のちの桓武天皇——の病気平癒を願う僧たちは、この山の岩窟に向かって祈った。谷の奥、渓流のほとりに口を開けるその洞穴には、龍神が棲むと伝えられていた。祈りは届き、勅命によって寺が建てられた。
室生寺のはじまりである。
以来、この谷の龍は都の記録にたびたび姿を現す。平安の都が旱魃に苦しむたび、朝廷は京都の貴船とならんで室生へ雨乞いの使者を送った。空海が京の神泉苑で雨を祈った際に現れたと伝わる龍王・善女龍王も、のちにこの谷の龍穴に棲むと語られるようになる。雨を司る龍は、千二百年のあいだ、この谷の主であり続けている。
2006年、同じ山の上に、水の流れる螺旋が刻まれた。構想したのは、室生に生まれた彫刻家・井上武吉。故郷の山全体をひとつの美術館にするという夢を抱きながら、彼は完成を見ることなく1997年に世を去った。その志を受け継いだのが、旧知の友であったイスラエルの彫刻家ダニ・カラヴァンである。「作品は、その場に立ち、歩き、触れ、匂いを嗅ぎ、耳を傾けて、はじめて味わえる」と語ったカラヴァンは、石やコンクリートだけでなく、太陽の光、風、そして水を素材に選んだ。
丘を渦を巻いて流れ下る細い水路。伊勢と大和の聖地を結ぶ北緯34度32分の軸線上に立つ塔。龍穴の伝説を知る者の目には、山肌をくだる水の螺旋が、小さな龍のようにも見えるだろう。
古代の祈りと現代の彫刻。かたちは変わっても、この谷で人が水に向けてきたまなざしは、おそらく同じだ。龍は、いまも室生にいる。
※本ツアー料金にはお食事、追加オプション料金は含まれていませんので、あらかじめご了承くださいませ。
※室生山上公園芸術の森は毎週火曜日および12月29日〜2月末日が休園のため、本ツアーは冬季を除く火曜日以外の日程で催行いたします。